研究概要 |
1.Y染色体ライブラリ-(フロ-サイトメトリ-で集められた約4kbのY染色体断片を含む)を女性genomic DNAでスクリ-ニングし9個のY染色体特異DNA断片(pYー25,48,50,80,102,111,146,148,153)を分離した。これら9個のうちpYー25とpYー80はサザンブロッテイングでlow copy repeatの男性特異性を示した。残り7個は男性特異的バンドに加えて常染色体またはX染色体を含んでいた。pYー80については4.6kb断片のうち2.8kbについてnucleotide sequencingを行なった。pYー80は現在まで報告されているY染色体特異DNA配列との比較で相同性は認めず、EMBLデ-タライブラリ-に新規登録した(登録番号X51582,Human pYー80)。pYー80はin situ hybridization法によりその座位をYp12ーYpterと決定した。 2.Polymerase chain reaction(PCR)を用いた性別判定:羊水、毛根、口腔うがい液、乾燥濾紙血液、尿上皮細胞からDNAを抽出しpYー80のPstIーEcoRI断(0.7kb)を挾む20merのoligonucleotidesをプライマ-としてPCRを行ない、pYー80のY特異性を証明した。この結果、pYー80を用いたPCRは上記細胞の性別判定に有用であることが判明した). 3.起源不明の染色体断片の同定:仮性半陰陽を呈し、起源不明の無マ-カ-染色体を有する二人の女児例45,X/46,X,+marと45,X/46,X,+r(?)でPCR法を用いてその起源がY染色体であることを証明した。 4.蛍光in situ hybridization(Fluorescence in situ hybridization:FISH)への応用:pYー80をbiotinまたはdigoxigeninラベルし得られたプロ-ブを用いY染色体上へのマップを試み,pYー80の座位がYp12にあることを示した。また、pYー80のPstIーEcoRI断片(0.7kb)を挾むPCR産物をbiotinまたはdigoxigeninラベルし得られたプロ-ブでもFISHが可能であることを示した。これによりpYー80はPCR法で種々の検体(羊水、リンパ球、口腔粘膜上皮、尿上皮など)のY染色体特異性を証明できるだけでなく、直接染色体標本上に観察できることを明らかにした。その応用例として、男性不妊症患者において46,X,+marの染色体構成を持つ患者2例において、PCR法およびFISH法でこれら2例が46,X,psu dic(Y)であることを証明できた。また小環状染色体の起源をY染色体由来であると証明できた。 5.尿道下裂を伴った46,XX男児でpYー80およびsex determining region Y(SRY)プロ-ブを用いたPCRを行ったところ、PCR産物は得られなかった。このことは尿道下裂を伴った46,XX男性と尿道下裂を伴わない46,XX男性ではその原因が異なることを示唆した。 6.起源不明の染色体断片の同定:起源不明のマ-カ-染色体を有する症例において起源の同定を行なった。また羊水細胞を用いて性決定を行なった。
|