研究概要 |
anthraquinone系の抗腫瘍剤mitoxantrone(MIT)および造血因子の遺伝子組換え型ヒトGーCSF(rhGーCSF)のマウス骨髄単球性白血病細胞株 WEHIー3B(D+)に対する分化誘導作用機序の異同について検討した。液体培養系(血清含有培養系および無血清培養系)で,WEHIー3B(D+)の細胞濃度にかかわらず,MITによりWEHIー3B(D+)細胞の成熟顆粒球様細胞への分化傾向が認められ,nitroblue tetrazolium還元能の誘導およびASD chroloacetate esterase の染色性の増強傾向がみられた。既に無血清培養系において直接作用ではなく二次的な分化自己誘導により分化誘導活性を示すことが,平成元年度の研究結果より判明しているrhGーCSFでは,WEHIー3B(D+)細胞が低細胞濃度の場合には分化誘導作用は認められなかった。WEHIー3B(D+)細胞の細胞濃度が1×10^5/ml未満の低細胞濃度の条件下でもMITによる分化誘導が観察されたことより,GーCSFによる分化誘導とは機序が異なり,MITの直接作用であることが示された。 MITの急性非リンパ性白血病患者由来白血病細胞に対する殺細胞作用,増殖抑制作用および分化誘導作用について検討した。液体培養系で,FAB分類のM2,M5由来白血病細胞では,MITによる分化傾向は観察されなかったが,3例のM4(骨髄単球性白血病)患者由来白血病細胞では,MIT添加によりマクロファ-ジ様細胞への分化誘導が認められた。以上のマウスおよびヒトにおける実験結果よりMITは骨髄単球性白血病細胞に対して,比較的,普遍性のある分化誘導因子であることが示唆された。
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