研究課題/領域番号 |
01570545
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
小児科学
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
桃井 真里子 自治医科大学, 医学部, 助教授 (90166348)
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研究分担者 |
小黒 範子 自治医科大学, 医学部, 助手 (10214107)
下泉 秀夫 自治医科大学, 医学部, 助手 (30196547)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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キーワード | MELAS / ミトコンドリア脳筋症 / ミトコンドリア遺伝子 / ミトコンドリアtRNAーLeu(UUR) / ミトコンドリア遺伝子点変異 / 母系遺伝 |
研究概要 |
(1)ミトコンドリア脳筋症のうち小児科領域に症例が多く、遺伝子変異が解明されていない病型であるMELAS(MiLochondrial myopathy、encephalopaty、lactic acldosis and strokelike episodes)の遺伝子変異を同定した。ミトコンドリア遺伝子は塩基置換頻度が高く個体差が大きいため疾患関連遺伝子変異を同定する際に問題があるが、我々は、MELAS患者からミトコンドリア電子伝達系酵素欠損細胞と正常細胞を発癌遺伝子導入によりクロ-ン化し、疾患関連遺伝子のみをことにする2細胞を同時にミトコンドリア遺伝子の全塩基配列を直接塩基配列決定法で決定することにより、MELAS関連遺伝子変異を同定する方法論をとった。 酵素欠損細胞においてミトコンドリア遺伝子上のtRNAーLEU(UUR)遺伝子上、塩基番号3,243のAーG 置換が確認され、MELAS関連遺伝子変異と同定した(1990)。 (2)上記の塩基置換により、変異遺伝子のみ制限酵素Apalのrestriction site を獲得し、Apal処理で正常ミトコンドリア遺伝子を変異ミトコンドリア遺伝子を定性的、定量的に解析可能であった。リンパ球における変異ミトコンドリア遺伝子の存在を、ミトコンドリア遺伝子のPCR増幅フラグメントをApal処理後アガロ-ス、またはポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析した。MELAS5症例のうち4例は 上記のtRNAーLEU(UUR)遺伝子上のAーG置換をもち、リンパ球のミトコンドリア遺伝子は正常と変異遺伝子のヘテロプラスミ-を示した。 上記の変異を示す症例の全ての母親のリンパ球に1.5ー8.5%の変異遺伝子が検出された。父親のリンパ球ミトコンドリア遺伝子は全て正常遺伝子のみであった。健康な同胞3人中、2人のリンパ球に7.1ー28%の変異ミトコンドリア遺伝子が検出された。以上から、MELASの大部分症例はリンパ球で遺伝子診断が可能であること、MeLASの変異遺伝子は母系遺伝を示すること、リンパ球で保因者診断が可能であることが明らかにされた(1991)。 (3)更に、MELAS変異遺伝子の組織分布を解析するためにMELAS患者剖検組織における変異ミトコンドリア遺伝子を定量解析した。 検索した組織全てが正常遺伝子と変異遺伝子のヘテロプロラスミ-を示した。変異遺伝子の割合が多い順に、大脳、心筋、肝、賢、骨格筋、脾 であり、臨床症状との相関が示唆された。 (4)変異遺伝子の発現様式の解析のために、クロ-ン化筋細胞における変異形質(電子伝達系酵素活性欠損)の発現が、細胞分裂時期、細胞密度、細胞分裂に影響をあたえる物質(ステロイドなど)で変化することを解析した。この結果は1991年5月に発表予定である。 (5)以上、MELASにおける変異遺伝子の同定とその組織内分布、家族内分布を解析し、細胞において変異遺伝子の発現様式を解析することで、MELASの遺伝子レベルの基本的病態が明かとなった。
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