研究課題
一般研究(C)
第一の目的は胆道閉鎖症患児の肝組織からレオ3型ウイルスの抗原および核酸を同定することであった。免疫組織化学として蛍光抗体法および酵素抗体法を行い、抗原陽性部位は門脈域周囲の肝細胞および増生胆管上皮細胞の細胞質に著明に認められた。この結果、本症患児25例全例の肝組織にレオ3型ウイルスの抗原を見いだした。これに対して肝疾患コントロ-ル8例のうち6例と非肝疾患コントロ-ル3例ではこの抗原は陰性であった。免疫電顕では光顕レベルでのレオ3型ウイルス抗原がライソゾ-ム様の空胞に局在することがわかった。一方、本症患児の肝組織から核酸を抽出し、精製したレオ3型ウイルス全体をプロ-ブとしてノザン・ブロット法を行った。この結果、患児の肝組織にはレオ3型ウイルスRNA分節のうち、M_1分節が共通して認められた。さらにM_1分節に対するプロ-ブを生成し、肝組織から抽出したRNAをDNAに変換した上でPCR法を行った。この結果、本症患児3例全例でM_1分節が同定され、そのシ-クエンスは既知のそれと一致した。以上から胆道閉鎖症患児の肝組織では肝細胞または増生胆管上皮細胞のライソゾ-ム様空胞に、レオ3型ウイルスRNAのうち少なくともM_1分節が存在して複製していることが示唆された。このことから本症患児は、離乳直後のマウスに胆管閉塞を来すレオ3型ウイルスに感染したものと考えられた。本研究の第二の目的は本症モデルの作成であったが、離乳後マウスにレオ3型ウイルスを接種して肝組織内にウイルス抗原を見いだしたが、胆管閉塞のメカニズムまで解明するところには至らなかった。
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