研究概要 |
1.Lactobacillus casei cell wall extract(LCWE)によるマウスの心・血管炎誘発:マウスはBALB/cとC3H/HeJを用いた。生後4週の両マウス(各実験に4匹使用)にLCWEを投与量(0.5ー2.0mg/1回)と投与回数(1回,2回/2週毎,4回/1週毎)を様々に変えて腹腔内に注入し,初回投与から4ー5週目に屠殺して,心臓の病理組織学的変化を検討した。BALB/cマウスでは,19例中5例に心外膜炎と心筋炎が発生しており,殊に0.5mgを4回投与の場合に高率に認められた。しかし,ヒト川崎病の剖検病理に酷似した冠状動脈炎の発生は0.5mgを1回投与した1匹に認めたのみであった。LCWE2.0mg/1回を投与した場合には,注射後数日内に全て肺出血にて死亡した。一方,C3H/HeJマウスでは,2回投与の1例で冠状動脈炎の発生を認めたが,他の18例では変化は認められなかった。 2.LCWEによるマウス腹腔マクロファ-ジの催炎サイトカイン(lLー1,TNF)産生能:BALB/cマウスとC3H/Hejマウスのthioglycollate誘導性腹腔マクロファ-ジを用いて,LCWE刺激によるlLー1とTNFの産生をLPS刺激の場合との比較で検討した。BALB/cマウスのマクロファ-ジはLCWE刺激によりLPS刺激を上回る著しいlLー1の産生を認めた。また,マクロファ-ジのlLー1 mRNAの発現の程度もLCWE刺激で顕著に認められた。これに対して,C3H/HeJマウスのマクロファ-ジではlLー1,TNFの産生及びlLー1 mRNAの発現程度も極めて低値であった。 以上,この2つの実験結果を総括すると,LCWE腹腔内注入により認められるBALB/cマウスの川崎病類似の心臓病変の発症に,マクロファ-ジの産生する催炎サイトカイン(lLー1,TNF)作用の強い関与が示唆された。今後,LCWEによるマウス心臓病変(殊に冠状動脈炎)の発生頻度を高めるための最良な条件を決めことと,心臓病変誘発に係わる催炎サイトカインのより直接的な証拠を明らかにして行く考えである。
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