研究概要 |
私達は平成2年にも胎生期動脈管の薬理学的研究をラット胎仔を用いて研究し,次のような研究成果を挙げた。 既に報告した如く,インドメサシンとベ-タ-メサゾンの併用により,それぞれの単独投与よりもはるかに強い動脈管収縮が生じる事を私達は世界で始めて報告した。この研究を更に発展させ,本年度にはスリンダクとベ-タ-メサゾンの併用の動脈管収縮作用を妊娠満期のラットを用いて研究した。スリンダクはインドメサシンと比較して腎臓の機能への抑制作用が殆ど無く,未熟児の動脈管開存症の治療に用いるのに,優れている薬剤である。私達の実験ではスリンダク1mg/kgの胃内注入,スリンダクの同じ量の同じ投与とベ-タ-メサゾン1mg/kg皮下注射の併用,ベ-タ-メサゾンの同じ量,同じ投与方法の単独の効果を比較した。 この研究の結果は,インドメサシンの場合と同様にスリンダクの場合にもベ-タ-メサゾンと併用する事により相乗効果が現れ,それぞれの単独の投与の効果より併用の効果がはるかに強い事が判明した。投与4時間後のラット胎仔動脈管の収縮の強さを比較するとスリンダク単独投与と比べて,ベ-タ-メサゾンを併用すると,動脈管収縮はスリンダク10倍量投与相当の強い収縮を生じた。 従ってこの結果から未熟児動脈管開存症への治療についてスリンダクとベ-タ-メサゾンの併用も効果が大きい事が予測され,新しい治療方法の基礎が築かれた。
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