本研究は平成元年度から2年かけおもに成人型呼吸急迫症候群(ARDS)の人工肺サ-ファクタント補充療法について動物モデルを用い研究した。 動物モデルとしてラットにオレイン酸を0.1ml/Kg頚静脈より静注しARDSモデルとした。一年目の研究ではこのARDSモデルに人工肺サ-ファクタント補充療法を投与しその効果について検討した。結果はサ-ファクタント補充療法は効果が無いのみならずかえって悪いという結果であった。この原因として肺サ-ファクタントインヒビタ-が肺胞内に多量に排出されサ-ファクタントと結合をしさらに肺コンプライアンスを低下させること、ないし血管透過性が高まり肺浮腫の進行が急速におき肺サ-ファクタントが肺胞に広がる事ができないためと推測された。STATIC LUNG COMPLIANCE は人工肺サ-ファクタント補充療法群では低下しておらず前者の可能性は低いとおもわれた。このことは肺をフルオロカ-ボンで肺洗浄したのち人工肺サ-ファクタント補充療法が全く効果を示さなかった事からも推測できる。一方デキサメサゾン投与をオレイン酸投与後1時間に投与した効果を見てみるとデキサメサゾン投与した後人工肺サ-ファクタント療法を行った群ではサ-ファクタント補充療法のみの群と比較し有意に血液ガスの改善が見られた。またデキサメサゾン投与のみとコントロ-ル(オレイン酸投与のみの群)と比較してもデキサメサゾン群の血液ガスはいい傾向がみられ、また肺重量もデキサメサゾン投与群では非投与群に比較して軽い傾向が見られた。このことはデキサメサゾンはオレイン酸投与によるARDSモデルにおいて急速に肺浮腫を軽減し、さらに人工肺サ-ファクタント補充療法を補完するものと推測された。新生児呼吸急迫症候群では人工肺サ-ファクタントが著効しているが必ずしも全例に効果が認められるわけではない。肺浮腫の著明な症例にはデキサメサゾン投与と人工肺サ-ファクタント補充療法との併用が良い結果をもたらす可能性があると推測された。
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