乾癬の病因について、特徴的所見である表皮の増殖性変化、あるいは白血球の表皮内浸潤を主とする炎症性変化に、cAMP、leukotriene B4、補体等の関与が考えられてきた。一方、表皮細胞は、インタ-ロイキン(IL)ー1、ILー3、ILー6、ILー8、granulocyteーmacrophage colonyーstimulating factor(GMーCSF)、granulocyte(G)ーCSF等の、炎症あるいは表皮の増殖に関与するサイトカインを産生している。さらに、乾癬病変部にはTリンパ球が浸潤し、インタ-フェロン(IFN)ーγ等のサイトカインを産生する。このような、表皮細胞あるいは浸潤Tリンパ球により産生される様々なサイトカインが、乾癬の発症に関る可能性について検討した。 さらに、サイトカインが乾癬の発症に関与している傍証として、サイトカインの一つであるTNFを乾癬患者に全身投与したときの臨床的効果についても言及する。乾癬の病変形成に、表皮細胞で産生されるサイトカインが、どのように関わっているかを、乾癬の病変部に作った水疣の内容液中および角層の抽出液中のサイトカインの量を測定し検討した。とくに、乾癬の組織の特微的所見である、表皮の増殖および白血球の表皮内浸潤との関係に注目した。乾癬の表変部の角層中のILー1は、正常に較べ低下しており、ILー1が乾癬の病変形成に積極的に関与しているとは考えにくい。正常および乾癬皮膚に作った吸引水疣内容液および角層抽出中には、TNFは検出されなかった。角層中のGMーCSF、乾癬表変部で増加していた。一方、正常あるいは乾癬病変部の角層中にはGMーCSFは検出されず、colonyーstimmulating factorの中では、GMーCSFがより重要な役割を果しているようである。中等症以上の乾癬患者10例にTNFを全身投与したところ、3例で著効が得られ、うち1例では10カ月以上皮疹の再発がみられない。
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