研究概要 |
健常成人の皮垢蛋白を高速液体ゲルクロマトグラフィで分析し、5分画(分画I〜V)を得た。分画Iは分子量59,000と52,000の蛋白質、分画IIは分子量45,000の蛋白質、分画IIIは分子量13,000と10,000の蛋白質を含み、分画IVとVは低分子の成分を含有した。これらの各分画を用いて、アトピ-性皮膚炎患者32名と健常人20名において、リンパ球幼若化試験を施行した。幼若化の判定には、BrdUモノクロ-ナル抗体・ABC法を用いた。アトピ-性皮皮膚炎患者の47%はヒト皮垢原液によってリンパ球幼若化試験陽性を示した。本症患者において、リンパ球幼若化を起こすヒト皮垢抗原の分画は一様ではなく、分画II〜分画Vの4分画に散らばって存在した。また本症患者の前腕屈側の無疹部において、ヒト皮垢の各分画によるスクラッチ・テストを施行した。本症患者におけるヒト皮垢スクラッチ・テストの陽性率は64%であった。スクラッチ・テスト陽性の抗原分画は全例において分画IIIであり、他の分画に陽性を示す症例は少数であった。そこで、ヒト皮垢のいずれかの分画によってリンパ球幼若化試験が陽性であった本症患者22例において、リンパ球幼若化を惹起するヒト皮垢抗原分画とスクラッチ・テストを惹き起こす抗原分画の異同を比較検討した。その結果、両反応の抗原分画が一致した症例が13例(59%)、一致しない症例(幼若化試験陽性でスクラッチ・テスト陰性の症例)が9例(41%)であった。現在われわれは、ダニ抗原を同様に分析し、本症患者において、各ダニ抗原分画に対するリンパ球幼若化試験とスクラッチ・テストを施行しているが、ヒト皮垢抗原分画の場合とほぼ同じ成績が得られている。
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