研究概要 |
これまで表皮細胞由来1L-1につき(I)ヒト腫瘍と、(II)マウス皮膚を材料に検索してきた。同材料を用い今回は、1L-1の機能を検討した。(I)皮膚腫瘍における1L-1の機能:昨年までの検索で、有棘細胞癌(SCC)と基底細胞上皮腫(BCE)で,1)免疫組織化学的検討で両腫瘍内に1L-1αとβを確認した(α優位),2)mRNAもαとβ共に検出(βは僅か)した,3)1L-1活性は両腫瘍ともα活性など、両腫瘍内の1L-1の存在を示した。そこで今回は1L-1と皮膚腫瘍増殖の関連を検討した。〔実験結果〕SCC培養細胞株HSC-1を用い^<35>S標識riboprobeを用いたin situ hybridization法で1L-1mRNAの存在とWestern blotting法で1L-1αとβ蛋白の存在を確認した。HSC-1株を培養し、精製1L-1(PIL-1),1L-1αとβ,EGF(対象,HCS-1が産生,腫瘍増殖と関連)を添加し^3Hチミジンの取込を測定した。これまでの報告と同様にEGFでは薄い濃度で増殖し、濃くなると増殖を抑制した。plL-1とlL-1αではEGFとほぼ同様の結果を得た。βには抑制効果はなかった。〔考察〕lL-1はEGFと同様に濃い濃度でのみ増殖抑制効果を示したので、濃度が薄いと考えられるin vivoでは少なくとも抑制作用はないと考えた。今後腫瘍細胞のlL-1receptorなどを検索し増殖との関連を検討する。(II)DNFBによる遅延型接触過敏(DTH)におけるlL-1の機能:昨年までのC3H/HeNマウスの検索で、1)対象のUV照射表皮lL-1はmRNAと活性が共に増加したがDTH表皮では増加しなかった、2)DNP化した表皮細胞と感作T細胞の混合培養ではin vitroで抗原提示が確認できたが表皮細胞のlL-1mRNAは増加しなかったことなどDTHでは積極的な表皮lL-1の産生が無いことを示した。〔実験結果〕今回Western blotting法で上記表皮lL-1の成熟型と未成熟型を検索したところαとβ共に未成熟型であった。〔考察〕表皮lL-1は常に表皮に貯蔵され、DTHなどの炎症の際には新たな産生がなくとも既存のlL-1を放出し、対応できると考えた。
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