研究概要 |
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)はヒトの表皮細胞のにみ感染し,その角化とともにウイルス粒子の増殖が起こる。一方,ウイルス感染細胞では細胞のトランスフォ-ムが起こり,ケラトヒアリン顆粒の粗大化やミルメシアのようにHE染色で好酸性に染め出される独特なケラトヒアリン顆粒が細胞貭内や核内に出現する。しかし,ウイルスDNAが存在しているにも係わらず疣贅組織のagingとともにこのあにな変質は失化し,乳頭腫という形態的な変化にとどめるにすぎなくなる。これらのことから角化細胞がウイルスの感染増殖を規定し,ウイルス遺伝子が表皮細胞の変化をもたらしていることが容易に考えられるが,どのような因子が相互に働いてこのような現象が生ずるのかま未だ明らかにされていない。 前回に引き続きミルメシアおよび尖圭コンジロ-ムにおけるHPVのmRNAの局在について検索を行った。ウイルス構成蛋白に関与する後期遺伝子群は有棘層下層または中層より顆粒層にいたるまでの細胞の細胞質内に認められ,しかもウイルス蛋白が検出される以前の細胞からしの局在が認められた。一方細胞のトランスフォ-ムやウイルスDNAの複製に関与する遺伝子である初期遺伝子群は基底細胞より観察できたが,有棘層ではそのmRNAの量は後期遺伝子群に比し非常に少なかった。また,これらの組織の新鮮凍結切片についてDNAポリメラ-ゼαにて増殖サイクルにある細胞の局在を検索したところ基底細胞に一致し,ミルメシアの体外培養の細胞においても検出された。また,これらの組織のDACM染色所見で角化におけるSH基からSS結合分への変換に異常は認められなかった。
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