研究概要 |
コラ-ゲンは皮膚真皮における細胞外マトリックスの主成分を成している.皮膚真皮内において結合組織が正常の機能を維持していくためには,コラ-ゲン遺伝子発現の調節が正確になされなければならない.すでに,in vitroの系において,ケロイド・強皮症由来培養線維芽細胞のコラ-ゲン合成能が異常に増加していることが知られているが,それらはともにmーRNAレベルの増加を伴っていることが明らかにされている.我々は特にmorphea,Werner症候群皮膚由来及びヒトトランスフォ-ム線維芽細胞のコラ-ゲン遺伝子発現について蛋白およびmーRNAレベルで正常と比較し,検討を行った.Morpheaにおける炎症皮疹部由来線維芽細胞ではα_1(I)コラ-ゲンは健常部由来線維芽細胞に対して,mーRNAで60%の高値を示し,蛋白レベルでは約20%高かった.硬化性皮疹部由来のものでは健常部とほぼ同じレベルであった.限局性強皮症(morphea)は,病変部と健常部が同一個体に存在することにより強皮症の病態を研究するのに好都合である.今回得られた炎症性皮疹部由来線維芽細胞は,transcriptional levelでのコラ-ゲン合成の増加が示唆される.Werner症候群においてはα_1(I)コラ-ゲンmーRNAは2.0倍,α_1(III)コラ-ゲンmーRNAは1.7倍の増加がみられ,またコラ-ゲンの蛋白レベルは1.6倍増加した.早期老化を主症状とするWerner症候群の線維芽細胞は,結合組織代謝異常の存在が強く示唆される.ヒトトランスフォ-ム線維芽細胞ではI型コラ-ゲンで5倍,III型で10倍,mーRNAレベルで低下し,また同様の低下がtranscriptional levelにおいても存在することがnuclear runーoff法により証明された.本研究におけるよいモデルシステムと考えられる.また,皮膚の弛緩を主症状とする先天性cutis laxaの線維芽細胞のコラ-ゲン代謝を検討し,この疾患ではコラ-ゲン遺伝子発現には変化はなく,コラゲナ-ゼ遺伝子発現の増加することを明らかにした.
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