ポジトロン断層をがんの治療評価に応用するための基礎研究として、昨年度は標識アミノ酸、特に ^<11>Cーメチオニンの腫瘍集積が放射線治療後にどのように変化するかをラットAH109A腫瘍を用いて調べた。その結果、放射線治療後、 ^<11>Cメチオニンの腫瘍集積の低下が、腫瘍体積の縮小や壊死の拡大に先行しておこり、鋭敏な治療効果診断の指標となることがわかった。 本年度は、他の代謝トレ-サ-との比較、また従来より臨床で用いられている ^<67>Gaとの関係を明らかにするために、四核種分別計測法を開発した。半減期の障差、エネルギ-の差を組み合わせることにより、^<18>Fフルオロデオキシングルコ-ス、 ^<18>Fフルオロデオキシウリジン、^<67>Gaークエン酸、 ^<14>Cメチオニン、 ^3Hチミジンを同一実験モデルで比較した。その結果すベすてのトレ-サ-は腫瘍の放射線治療効果を反映し、治療後に腫瘍集積が低下した。しかし、その反応パタ-ンはトレ-サ-により異なり、最も反応が早いのがチミジンであり、メチオニンもほぼ同様であった。フルオロデオキシグルコ-スはこれらに遅れ、ゆっくり低下した。腫瘍における放射線障害が、DNA代謝、アミノ酸代謝、糖代謝の順に観察されたものと考えた。フルオロデオキシリジンは反応が早いが、絶対値の変動が小さく、検出に難点があると思われた。^<67>Gaはいずれの代謝トレ-サ-とも異なり、早期には有意差はなく、時間が経ってから変化した。照射線量を変化させたところ、チミジン、メチオニンで最も明瞭にトレ-サ-集積の線量依存性が認められた。また、再発巣の検出能も同時に示された。 本研究の成果として、放射線治療を腫瘍の代謝という新しい側面から評価することが可能になっただけでなく、ポジトロン断層と^<11>C標識メチオニン、チミジンを使用することにより、鋭敏な放射線治療の指標として臨床応用への道が開かれた。
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