昨年度に引き続いてIr線源の線量配分が腫瘍の制御と後障害にどのように働いているか、治療容積、線量・時間関係などの臨床パラメ-タ-について解析を行なった。舌癌治療例について、IrおよびRa両線源の腫瘍制御および後障害発生に対する線量分布、容積・線量ヒストグラム(VDH)の解析と比較、さらに今年度は外部照射、抗癌剤などを併用した複合治療の寄与についても分析を試みた。Irの容積線量ヒストグラムは昨年度に明らかになったように、Raに比し最頻線量への容積集中度が高くなる傾向にある。このことは個々の線源を別々に刺入はるRaに比し、Irでは後装填法のため、誘導管を通じて2本の線源を同時に刺入できるため、Raよりも線源配置が安定しており、線量の局在性が勝れていることを意味しており、今回の分析により、線量分布からも裏付けられた。Ir刺入に際し治療前の計画段階で、Raで使うManchester法を適用すると1平面刺入の線源面から治療面までの距離が5mm以下と薄くなるため表在型の腫瘍に適用する例が多かった。そのためか局所制御率は極めて勝れている半面、後障害がRaの3倍と高率であったが、その要因は70Gy以上の線量を受ける部分の累積容積率(CVR)がRaよりも高く、その値が90%を越ると障害が多発する傾向を示した。Ir単独ではspacerを用いることで顎骨への線量を軽減することが容易で、顎骨露出は皆無であった。一方、外部照射・小線源の複合治療による場合、基本的方針としてRa、Irいずれの場合も後障害を軽減するために、外部照射による線量寄与をなるベく少なく、小線源線量配分を大としているため、小線源線量が低い症例が少なく分析が困難であるが、局所制御線量にT病期間で違いが見られた。腫瘍容積により治癒を得られる小源啓線量に境界がある可能性が示唆され、今後の研究継続が必要である。
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