研究概要 |
癌の放射線治療においては、癌細胞の放射線感受性のわずかな差が腫瘍局所の最終制御の成否に影響する。従って、事前に腫瘍の放射線感受性を放射線生物学的に予測し、最適一回線量、総線量を個々の症例に於て決定した上で照射を行う事が望ましい。更に、正常組織についても感受性の個体差を知り、耐容線量個体差を推定できればより適切な放射線治療が出来る。人食道癌の手術材料から14系の癌細胞を得て、Micron ucleus Assayで感受性を調べた。酵素処理によって単離腫瘍細胞を得た後、培地を含むペトリ皿にて培養する。数日を経て、腫瘍細胞が増殖を開始したのを確認した後、50KVpのX線にて照射を行い、照射後に分裂した細胞を特定すべく、CytochalasinBを加えた、48、72時間後に細胞を回収し、エタノ-ル、カルノア液にて固定し、スライドガラス上に展開固定し、核酸染色を施して、蛍光顕微鏡でMicronucleusを観察、計数した。線量頻度曲線はLinear Quadratic Modelで解析した。α/β値、酸素増感比を調べた。α/β値は無限大から1.5まで分布し、酸素増感比は2.7から1.3まで分布した。この様に、細胞レベルで腫瘍の放射線感受性は大きく異なることが解った。正常組織の放射線感受性の個体差を調べる試みの基礎実験を3系統の純系マウス(CA/J,Ba1b/C,C3H/He)を用いて行った。Micronucleus頻度で評価したリンパ球の放射線感受性には顕著な系統差を認めた。感受性の系統差は、他の正常組織(小腸上皮、線維芽細胞)においても、同じ順序で認められた。これはリンパ球の放射線感受性を調べることにより、耐溶線量の個体差を推定し得る事を示している。10人の患者についてリンパ球の放射線感受性を調べた。感受性の明らかに低い患者2名については、皮膚の放射線反応も極めて軽微であった。Micronucleus Assayの有用性を示唆するものと考えられる。
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