癌温熱療法の効果を決定する基本的な要素は温度で、臨床応用を有効に進め、その治療結果を正しく評価する為には、加温中の生体内温度分布を知る事が必要不可欠となる。そこで計算により温度分布を推測する計算システムを開発した。16ビットパ-ソナルコンピュ-タを用い、RF波誘電型加温時の一次元の温度分布計算を行なうシステムを完成した。定常状態と非定常状態の温度分布計算が可能で、計算はCTデ-タにもとずき、有限要素法により行われる。定常状態の温度分布計算であれば、CTデ-タの入力から約10分で計算が可能である。非定常状態の温度分布計算は、実際に治療が行われるスピ-ドとほぼ同じ速度で行われる。定量的にはまだ検討の必要があるが、臨床治療上有益な情報を提供し、臨床上有益なシステムと考えられた。三次元プログラム、非線形プログラムの開発もコンピュ-タセンタ-を利用して行った。しかしコンピュ-タセンタ-を電話回線により使用するシステムは、デ-タ転送に時間がかかりすぎ、また回線の維持に努力が必要で、一般臨床の場で使用するには不適当と考えられた。したがって組織循環研究に使用可能なシステムは、研究の緒についた段階までとなった。プログラム的にはかなり検討が進んだが、計算に必要な生体内の熱的、電磁気的諸定数の値の加温時のデ-タが非常に不足している。血流量の検討はかなり進み、患者の組織内血流量を測定温度記録のWashout curveから計測する方式も実用化のめどがついたが、その他の定数に関しては手つかずの状況で、今後のデ-タの収集が必要である。臨床の場で使用できる温度分布計算システムのプロトタイプが完成した事により、今後この領域の研究は急激に進ものと考えられる。
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