研究概要 |
平成1年度の血流モデルファントムを使った実験及び健常人による検討により、MRIを使った血流画像作成の可能性が強く示唆されたので平成2年度は、臨床例に対する腹部領域での応用を主に施行した。方法としては、高速撮像法を利用したタイムオブフライト法及び血流の位相変化量を利用したフェイズコントラスト法の両者を用いた。前者は、上腹部の呼吸停止撮影に利用できるため、呼吸運動による画像の乱れをふせぐことが可能で、特に肝内血管、門脈の描出に有効であった。後者は動脈性の変化をとらえるのに有効で、特にその3次元法は動脈分枝の描出に優れていると考えられた。また、後者の2次元法を心拍に同期させて撮影することにより、動脈の血行動態の把握も可能であった。疾患としては,原因によらず血管の閉塞性変化の把握に有効であり、閉塞部位の確認、側副血行路の描出に有用と考えられた。また、動脈、静脈、門脈を含めた全体的な血管解剖の把握に便利であり、解剖学的変異の確認に有効で、特に肝手術前の情報として肝内血管解剖の把握は非常に有用と考えられた。 今後の問題点としては、より確実な血管構造の描出の必要性があげられ、特に疾患例では、血流速度の大きな変化や、乱流の発生の可能性が高く、これらに確実に対処できる方法が開発されなければならない。また、より微細な血管構造の描出のための方法の開発も今後の課題であり腫瘍血管を含めた小血管の描出も今後検討される必要がある。
|