研究概要 |
本年度は、以下の3項目について、Lewis肺癌においての抗腫瘍効果および転移に及ぼす影響を調べた。 1.各種抗癌剤の腫瘍内投与による抗腫瘍効果は、腹腔内投与より高く、かつ転移もそれと同等に抑制されることがわかった。特に皮内腫瘍では高い効果が得られた。腫瘍内投与法の問題として、腫瘍から薬剤の洩れや消失が大きいことがある。この解決法の一つとして頻回投与法や血管収縮剤との併用が優れることがわかった。その他の薬剤との併用として、DMP,Amphotericin Bの併用に期待が持てた。薬剤を腫瘍内に長くとどめておく目的でエマルジョン化やリピオド-ル、油性化を試みたが、投与時に圧力が必要となり、転移の促進の可能性があった。 2.放射線と腫瘍内増感剤投与との併用は、筋肉内腫瘍においては腹腔内投与とほぼ同等の効果があった。皮下腫瘍においては腫瘍内投与がはるかに優れた。また、放射線照射後における腫瘍内増感剤投与と照射の効果は、初めの照射後6日目においては増感効果は低下した。むしろ、腹腔内投与に効果が高かった。再発癌に対する腫瘍内投与の効果は、非再発腫瘍よりも効果が低くなり、期待はずれの結果となった。 3.温熱と腫瘍内薬剤投与の併用を試みた。相乗効果が期待できる薬剤は、CDDPの誘導体であるDWA2114R,PEP,BLMであった。一方、ACR,CPTー11,NCS,MMCは相加的効果であった。腹腔内投与との比較では、薬剤単独では腫瘍内投与法が優れるものの、温熱併用時には腹腔内投与とほぼ同効果となった。この原因は、温熱による血流の増大による腹腔内投与時の薬剤の集中と腫瘍内投与された薬剤の腫瘍外への流出増加によるものと考えられる。剤形では、PEPーエマルジョン、BLMーリピオド-ル、油性BLMとも水性の薬剤とは殆ど効果は同等であり、転移の促進の可能性があって、特にその有用性は認めなかった。
|