放射線・温熱抵抗性腫瘍と腫瘍内直接薬剤注入法の基礎的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570596
• 研究機関: 東海大学
• 研究代表者: 大泉 幸雄 東海大学, 医学部, 講師 (30024813)
• 研究分担者: 福原 昇 東海大学, 医学部, 助手 (70218949) ; 玉井 好史 東海大学, 医学部, 助手 (90207225)
• キーワード: 放射線 / 温熱 / 抵抗性腫瘍 / 制癌剤 / エピネフリン / 腫瘍内注入 / ルイス肺癌 / ドラッグ デリバリ- システム

研究概要

1.放射線増感剤の腫瘍内投与時における腫瘍内濃度と増感効果の関係について。
腫瘍内投与による増感剤の腫瘍内濃度は、腹腔内投与の5〜8倍であったが、増感効果は腹腔内投与と変わらず、薬剤の腫瘍内不均一性が考えられた。また、腫瘍蟹への薬剤の流出は早く、投与10後で投与量の1%に過ぎなかった。しかし、血流の少ない皮下腫瘍においての増感効果は、筋肉内腫瘍に比べはるかに高く、また腫瘍内投与による細胞致死範囲は腹腔内投与と異にし、その両者の併用がより優れ、腫瘍内投与の有用性が示唆された。
2.腫瘍内エピネフリン投与による各種治療法への修飾。
(1)放射線との併用。エピネフリンの血管収縮によって血流は抑制され、低酸素化が放射線の効果を低下させた。しかし、増感剤との併用は、エピネフリンが増感剤の濃度を2〜10倍に高め、その増感効果は失わなれなかった。
(2)制癌剤の腫瘍内投与との併用。エピネフリンは、DWA2114R(CDDP誘導体)の効果を2〜3倍、PeplomycinやMMCの効果を1.3〜1.4倍に高めた。エピネフリンの血管収縮による薬剤濃度や細胞環境の変化を関与が考えられた。
(3)温熱との併用。エピネフリンは投与濃度と温熱温度に依存した著しい温熱増強効果があった。エピネフリンによる腫瘍周辺血管の収縮による腫瘍内環境の変化、恐らくpHの低下が温熱の増強を来たしたと考えられた。最適投与量や投与部位は、エピネフリンの腫瘍周辺への浸潤性に左右されることがわかった。
(4)制癌剤の腫瘍内投与と温熱との併用。エピネフリンはこの両者を増強し、三者併用で著しい効果を得た。
3.まとめ。(1)腫瘍内投与は、腫瘍内薬剤の滞留性と浸潤性に問題があるが、血流の少ない腫瘍には有効である。
(2)血管収縮剤の局所投与は、ある種の薬剤や温熱の効果を修飾し、三者の併用は臨床応用として有望である。

研究成果

• [文献書誌] Yukio OHIZUMI: "Combined effects on tumor growth and lung metastases in Lewis lung carcinoma treated by hyperthermia and intratumoral injection of antiーcancer drugs." Int.J.Hyperthermia.
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "エピネフリンの腫瘍内投与による温熱効果の増強" 日本ハイパ-サ-ミア誌.
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "エピネフリンの局所投与による温熱増強効果ー投与法の検討" 日本ハイパ-サ-ミア誌.
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "放射線増感剤の腫瘍内投与法に関する基礎的研究" 日本放射腫瘍学会誌.
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "エピネフリンによる腫瘍内投与された抗癌剤の効果増強について" Drug Delivery System.
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "抗癌剤とエピネフリンの腫瘍内投与と温熱との併用効果" 日本医学剤射線学会誌.
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "腫瘍内増感剤の基礎的研究ー血流と腫瘍内増感剤濃度の関係" 日本医学放射線学会 生物部会誌. 3. 84-86 (1990)
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "ルイス肺癌における局所温熱による肺移についての再検討" 日本ハイパ-サ-ミア学会誌. 7. 23-32 (1991)
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "局所温熱と抗癌剤(塩酸アクラルビシン,DWA21114R)併用時における移植ルイス肺癌の成長と肺転移に及ぼす影響について" 日本ハイパ-サ-ミア学会誌. 7. 33-41 (1991)
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "ルイス肺癌における腫瘍内薬剤投与による抗腫瘍効果に転移に及ぼす影響" Drug Delivery System. 6. 449-453 (1991)
• [文献書誌] 大泉 幸雄: "腫瘍内増感剤投与時の放射線増感効果" 日本医学放射線学会 生物部会誌. 4. (1991)