研究概要 |
1.腫瘍内抗癌剤投与の効果ー腫瘍内投与は腹腔内投与と比べ抗腫瘍性に優れ、副作用も少ないことを確認した。腫瘍内投与による転移促進は、投与量の多い場合とか粘稠性の薬剤の場合とか何カ所か投与する場合にその危険性があるが、抗癌剤の場合には転移促進はなくむしろ抑制された。 2.腫瘍内薬剤濃度・血流・増感効果の関係ー放射線増感剤の腫瘍内投与時の腫瘍内濃度は、腹腔内投与の数倍であったが、増感効果は変わらず、薬剤の腫瘍内不均一性と腫瘍内薬剤の滞留性に問題があった。薬剤の流出は血流と逆相関し、血流の少ない皮下腫瘍においての増感効果は、筋肉内腫瘍に比べ高く、また腫瘍内投与による細胞致死範囲は腹腔内投与と異にし、その両者の併用がより優れ、腫瘍内投与の有用性が示唆された。 3.腫瘍内薬剤投与による温熱効果の増強ー抗癌剤およびその他の薬剤をスクリ-ニングした。抗癌剤では、PEP,BLM,DWA2114R(CDDP誘導体),MMCであった。免疫賦活剤や膜作用物質などの増強作用は弱かった。しかし、血管収縮剤エピネフリンは投与濃度と温熱温度に依存した著しい温熱増強効果があった。エピネフリンによる腫瘍周辺血管の収縮による腫瘍内環境の変化、恐らくpHの低下が温熱の増強を来たしたと考えられた。エピネフリンの増強効果は、温熱直前に効果が高く、最適投与部位はエピネフリンの腫瘍周辺への浸潤性に左右されることがわかった。 4.エピネフリンと制癌剤の腫瘍内投与ーエピネフリンは、DWA2114R,PEP,MMCの抗癌剤の効果を1.3〜3倍高め、SMANCSや放射線の効果を低下させた。エピネフリンの血管収縮による薬剤濃度や細胞環境の変化の関与が考えられた。 5.エピネフリン・抗癌剤・温熱の併用効果ー三者の併用によって、著明な効果を得た。転移促進も無く、比較的低温の温熱で増感は可能であり、エピネフリン濃度も低くして増強が得られ、臨床応用が有望視された。
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