研究概要 |
前年度において、我々はFawnーHooded系(FH)ラットを用いて、悪性症候群の病態モデルを作成し、神経化学的検討に基づいて、FH系ラットにおけるシナプス前および受容体(5ーHT_2)の両過程を介した5ーHT神経活動の異常亢進が病体モデル成立過程の一要因となることを推定した。本年度は、本症候群の治療薬であるdantroleneの奏効機転を検討することによって、病態モデルの成立過程を解明することを試みた。得られた知見を整理すると、以下の通りである。1.dantrolene前処置は病態モデルの発熱反応、wet dog shakes 出現、血清CPK上昇を有意に抑制し,これらの抑制効果にはqantrolene2.5ー20mg/kgの範囲で明瞭な用量依存性が認められた。2.一方、5ーHT_2受容体の選択的アンダゴニストであるketanserin前投与は、病態モデルの発熱反応とwet dogshakesを抑制したが、血清CPK値上昇には何らかの効果を示さなかった。3.5ーHT受容体アゴニストである5ーMeODMT,Quipazineによって各々誘発される体温上昇反応とwet dog shakesは、いずれもketanserinによって抑止されることから、5ーHT受容体関連の指標と考えられた。Dantorolene前処置は上記2つの指標を用量依存的に抑制した。近年、5ーHT_2受容体はイノシト-ルリン脂質ーCa動質系に関連していることが明らかになり、一方、dantoroleneは骨格筋の筋小胞体からのCa遊離を抑制することによって、筋弛緩作用を発現することが知られている。以上の知見から、dantoroleneは細胞内Ca貯蔵部位である小胞体からのCaの異常放出の阻止という共通の機転を介して、骨格筋における異常興奮(筋硬直、血清CPK値上昇)や、5ーHT_2受容体を介する高熱反応を抑制し、全体としての症状改善効果につながるものと推定された。
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