E1マウス発作発現機構における脳内グルタミン酸とγーアミノ酪酸の役割に関する研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570607
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 横井 功 岡山大学, 医学部, 助手 (80150366)
• 研究分担者: 平松 緑 岡山大学, 医学部, 助手 (70124790)
• キーワード: E1マウス / アスパラギン酸 / グルタミン酸 / リリ-ス / 切片 / 大脳皮質 / 海馬 / 抗てんかん薬

研究概要

従来は、放り上げ刺激により痙攣感受性の高まった、発作間欠期のE1マウス、放り上げ刺激を行っていないE1マウス、及びこれらの母系であり痙攣素因のないddYマウスにおいて、大脳皮質切片からのアスパラギン酸及びグルタミン酸の放出について検討を行ってきた。今回は、突発的に高頻度に痙攣を起こすE1マウスとddYマウスについて、大脳皮質及び海馬の切片からのアスパラギン酸とグルタミン酸について検討を行い、次ぎの結果を得た。
(1)先に、われわれはこれら神経伝達物質の放出について50mMのカリウム濃度の刺激を用いていた。しかし今回はその半量の25mMのカリウムについて検討した結果、ddYマウスやE1マウスの大脳皮質及び海馬からのアスパラギン酸やグルタミン酸は、50mMのカリウムの場合と同様に著明に放出していた。(2)E1マウスのアスパラギン酸の放出は、ddYマウスに比べて、大脳皮質においてのみ有意に低下していた。しかし海馬では変化は認められなかった。またアスパラギン酸の取り込みは、ddYマウスとE1マウスの大脳皮質及び海馬において変化は認められなかった。(3)抗てんかん薬のデパケンはE1マウスの痙攣を阻止する。デパケンは、E1マウスの海馬からのアスパラギン酸の放出を抑制した。また、非カリウム依存性のアスアスパラギン酸の放出をも抑制した。(4)E1マウスにおいてはアスパラギン酸の放出量は、大脳皮質と海馬においてはいずれも同程度であった。しかしグルタミン酸の放出量は、E1マウスにおいては海馬の方が大脳皮質に比べて2倍多かった。
これらの実験成績より、E1マウスの痙攣感受性には大脳皮質及び海馬からのアスパラギン酸とグルタミン酸の放出が関係していることが明かとなった。

研究成果

• [文献書誌] Osaki,Y.,Hiramatsu,M.and Mori,A.: "Uptake and K^+ ーstimulated release of glutamate from cerebral cotrical and hippocampal slices in El mice,and dose effect of glutamate" NEUROSCIENCES. 16. 561-567 (1990)
• [文献書誌] Hiramatsu,M.,Edamatsu,R.,Kabuto,H.,Higashihara,Y.and Mori,A.: "Increased seizure susceptibility induced by guanidinoethane sulfonate in E1 mice and its relation to glutamatergic neurones" Neurochem.Res.14. 85-89 (1989)
• [文献書誌] Higashihara,Y.,Hiramatsu,M.and Mori,A.: "Aspartic acid release from cerebral cortical slices of El mice with high seizure susceptibility" Res.Comun.Chem.Pathol.Pharmacol.70. 155-171 (1990)
• [文献書誌] Sato,K.,Morimoto,K.,Hiramatsu,M.,Mori,A.and Otsuki,S.: "Effect of a noncompetitive antagonist(MK801)of NMDA receptors on convulsions and brain amino acids level in El mice" Neurochem.Res.14. 741-744 (1989)
• [文献書誌] Hiramatsu,M.,Edamatsu,R.,Suzuki,S.,Shimada,M.and Mori,A.: "Regional excitatory and inhibitory amino acid levels in epileptic El mouse brain" Neurochem.Res.15. 821-825 (1990)
• [文献書誌] Janjua,N.A.,Mori,A.and Hiramatsu,M.: "Increased aspartic acid release from the ironーinduced epileptic focus" Epilepsy Res.6. 215-220 (1990)
• [文献書誌] Mori,A.,Hiramatsu,M.,Kabuto,H.and Marescau,B: "Perspectives on Research in Emotional Stress Systems Research in Physiology Vo13" Gordon and Breach Science Publishers, 22 (1989)
• [文献書誌] Mori,A.,Yokoi,I.,Kabuto,H.,Hiramatsu,M.,Kwon,M.J.,Shimada,M.and Akiyama,K.: "International Perspecctives on selfーregulation and health" Plenum Publishing Corporation, 11 (1991)