研究概要 |
薬物の反復投与により、その薬物に対する反応性の低下(耐性現象)及び薬物反応性の増強(逆耐性現象)を生ずる場合がある。Dopamine(DA)拮抗剤の反復投与により前者、その興奮剤の反復投与により後者を生ずる。DA拮抗剤のhaloperidol(Halo)の反復投与からの離脱による痙攣誘発準備性の形成時に、痙攣発現機序の異なる誘発剤を投与した場合、benzodiazepine(BDZ)拮抗剤のβーDMCM(inverse agonist)およびadenosine拮抗剤のcaffeineによる痙攣の闘値が低下したが、GABAa拮抗剤による痙攣には影響しなかった。このβーDMCMによる痙攣闘値の低下はBDZ興奮剤のdiazepam、拮抗剤のRo15ー1788(partial agonist)によって対照群のレベルまでに回復した。この場合、Ro15ー1788はBDZの興奮剤、βーDMCMは拮抗剤として作用した。Halo離脱によるβーDMCM痙攣闘値低下に関して、BDZ系機構はDA性神経と直接相互作用するが、GABA性神経は直接関与しない。Halo反復投与によってHaloカタレプシ-反応は抑制され、後シナプスのDA Dー2受容体の感受性が亢進し、中枢の抑制性機構(プリン,DBZ,GABA性機構)はHaloに対する耐性現象に対して恒常性を維持する方向に作用した。この場合、Ro15ー1788はBDZの拮抗剤、βーDMCMは興奮剤として作用した。DA興奮剤のapomorphine(Apo)反復投与からの離脱により、大量のApoによって生ずる常同行動に対して、sniffingは増強(逆耐性)、licking,bitingは抑制(耐性)作用を示した。これらの現象に対して、抑制性機構、特にBDZ系は多様性の反応を呈し、行動発現部位あるいは発現経路が異なることが示唆された。Apoによるyawning反応、Haloカタレプシ-反応に対する実験結果から、Apo反復投与により前シナプスのDA受容体は抑制され、後シナプスのそれは変わからないが、Methamphetamine(MAP)では前シナプスのDー2受容体は興奮、後シナプスのそれは抑制された。したがって、遊離促進剤のMAPと直接受容体に作用するApoの異なる点である。
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