研究課題/領域番号 |
01570617
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
野村 総一郎 藤田学園保健衛生大学, 医学部・精神医学教室, 助教授 (80113091)
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研究分担者 |
池田 淑夫 藤田学園保健衛生大学, 医学部・精神医学教室, 助手 (60121430)
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キーワード | 過密環境ストレス / 抗うつ薬 / α_2アドレナリン受容体 / ノルアドレナリン代謝 / セロトニン代謝 / 強制水泳テスト |
研究概要 |
過密境界ストレスの生理学的影響の基礎検討を行い、その後に脳内各部位のノルアドレナリン、セロトニン代謝、受容体の変化を調べ、それらへの抗うつ薬連続投与の効果から、脳内α_2受容体機能変化を検討した。過密環境負荷3日目まではラットの体重は激減するが、4日目以降は回復傾向がみられ、7日以降体重増加率は正常化した。副腎重量変化、胃潰瘍の出現は認められず、open fieldでの行動量の差もみられなかった。しかし刺激への反応性は7日目以降のストレス負荷では著しく低下し、強制水泳中にはhead twitch行動が多発した。これらの結果は、過密環境が身体的には慣れやすいが、心理的には長期持続するストレスであることを示唆しており、これをストレス状況モデルとして使用しうると考えられた。 大脳皮質、視床下部、海馬のMHPG含有量は3日目には亢進するが、7日目以降は正常に復した。このことは、急性ストレス期には脳内ノルアドレナリン代謝の亢進、α_2受容体機能の付下が生じることを示唆している。^3H-clonidineによるα_2受容体結合能では、大脳皮質においてストレス負荷14日目に低親和性部位の減少がみられた。 抗うつ薬は過密環境ストレス下のラット視下部のMHPG量、海馬、大脳皮質の5HIAA量を増加させた。またストレスラットの示した強制水泳下のhead twitch行動も抗うつ薬7日以上の連続投与で減少した。 以上の神経化学的、行動科学的な研究から、ストレス下の脳内前シナプス膜α_2受容体機能は低下し、ノルアドレナリン代謝が亢進するが、抗うつ薬はそれをさらに低下させること、ストレスによりセロトニン受容体の亢進が生じるが、抗うつ薬はそれを抑制すること等が示唆された。今後はこのモデルを用いて、後シナプスα_2受容体機能との関連も調べ、脳内部位別の経時的変化をさらに詳細に行なう予定である。
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