研究概要 |
ヒトの睡眠障害の一分野をしめる、維持障害の原因は現在最も知られていない点の多いところである。この睡眠維持障害のレベルを、的確に化学的に数量化し、検査手段として確立することを目的として、NREM睡眠維持機能を反映していると思われる紡錘波と深睡眠との指標である高振幅δ波の構造要素を調べることで、睡眠の維持・安定性のレベルを化学的に測定できる可能性をさぐるとともに、睡眠維持のメカニズムとの間の関係を解明することを目的とする。本年度は、若年健常者を対象とした紡錘波と高振幅δ波の構造要素の基準値の作成が主な目的であった。基準夜3夜と昼寝を負荷した後の終夜での20歳から22歳の健常男子8例の睡眠ポリグラフ記録を行い、現有のソニ-マグネスケ-ル製21チャンネルデ-タレコ-ダに磁気記録した。さらに、オフラインにて現有のリアルタイム紡錘波・δ波分析装置により基準夜、昼間睡眠、昼寝負荷後の終夜睡眠での紡錘波、高振幅δ波の構造要素の検討を行った。若年健常者では、紡錘波構造要素のうち、特に周波数構造が睡眠の維持機能のレベルと密接な関係のあることが明らかとなった。即ち、睡眠が円滑に進行し、維持機能が的確に働いている状態では周波数は遅くなり,一方昼寝の負荷により睡眠維持機能を人工的に攪乱すると,紡錘波周波数は速い方向へシフトすることが明らかとなった.最近、紡錘波周波数出現機構と覚醒機構との関連性が神経生理学的研究より報告されており,睡眠中の覚醒機構のアクティビティのレベルを紡錘波周波数が反映している可能性が考えられた.また,高振幅δ波は従来は低周波帯域波が睡眠前覚醒時間の影響を大きく受けると報告されてきたが、波形認識法による解析では1.5Hz以上の帯域が修飾を受け易く,老化による影響や睡眠撹乱の影響も受け易いものと考えられた。
|