研究課題
ラット副腎皮質束状層細胞において、ACTHは、アラキドン酸の5-リポキシゲナ-ゼ(5LO)代謝産物の産生を増加させ、これら5LO代謝産物産生を特異的に抑制するAA861を前処置しておくと、ACTH刺激時のcAMP産生を抑制することなくステロイド産生がミトコンドリアレベルで抑制されることを報告した。今回私はこのことを立証するとともに更に作用部位について詳細に検討を加えた。1)5LOの特異的阻害剤であるAA861を前処置しておき外因性にアラキドン酸を10nmol/lより20μmol/lの濃度で加え、ACTHで刺激を加えた所、アラキドン酸のみを加えない対照群に比して変化が認められなかった。このことは、アラキドン酸がACTHにより刺激され5LO代謝産物に流れる過程がAA861により抑制された結果、低下していたプレグネノロンの産生が元に戻らなかったと考えられ、5LO代謝産物がミトコンドリアでのプレグネノロン産生に重要であることをAA861を用いて検討したことが有用であったことを示す成績である。2)AA861を用い内因性の5LO代謝産物を低下させた状態でACTH刺激を行いAA861を前処置しないでACTH刺激を行ったミトコンドリアを対照として、プレグネノロンを外因性に添加して吸光スペクトラムの変動(pregnenolone-induced inversed type II spectrum:ステロイド基質であるコレステロ-ルとコレステロ-ル側鎖切断酵素(P-450scc)の結合状態を定量化する方法)を観察した所、両者に差が認められなかった。以上の結果より、5LO代謝産物は1つにはミトコンドリア内膜でコレステロ-ルとP-450sccの結合過程以後で作用していると考えられる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)