研究概要 |
昨年度までの成績からバゾプレシン(AVP)分泌制御上、オピオイドペプチドが重要な役割を持つことが明らかとなったが、今年度は中枢性の抑制性神経伝達物質であるγーアミノ酪酸(GABA)とオピオイドペプチドの相互作用について検討した。無麻酔・無拘束下のSDラットを用い、GABA実験当日7日前に脳固定装置および実体顕微鏡を用い留置したカテ-テルから脳室内投与し、高張食塩水負荷による浸透圧性のAVP分泌反応に与える影響を検討した。一方、一部のラットではGABA投与前にオピオイドペプチド拮抗剤であるnaloxone処理を行いAVP分泌の変化を観察した。高張食塩水負荷ラットにおいてはGABA100μgの脳室内投与10分後より30分後まで血漿AVPは有意に低下し、30分後においては対照群(3.4±0.76pg/ml,mean±SE)に対しても有意(P<0.05)の抑制(1.1±0.17pg/ml)を生じた。高張食塩水負荷ラットにおけるGABA脳室内投与の用量反応の検討ではGABA50μgの投与はAVP分泌に影響を与えなかったが、100μg以上の用量によってAVPは有意に抑制された。GABAおよびnaloxoneのAVP分泌に与える影響の検討では、高張食塩水投与により上昇した血漿AVPは前述したようにGABAにより有意の抑制をうけ低下を示したが、この抑制はnaloxoneの前処理により阻害された。naloxoneの単独投与はAVP分泌亢進下においても影響を与えなかった。以上のように、GABAによるAVP分泌抑制がnaloxoneの前処理により部分的に解除された事実から、GABAのAVP分泌調節系には内因性オピオイドペプチドを介する経路が介在、あるいは関与する可能性が考えられる。事実、脳内各部で同一ニュ-ロン中にGABAおよびオピオイドペプチドが共存することも報告されており、今回の研究の結果からAVP分泌制御に関する複数の神経伝達物質間に相互関係が存在し、繊細な調節作用をもつことが強く示唆された。
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