糖尿病性合併症の原因として高血糖に基づくポリオ-ル代謝等の代謝異常が重視されているが、血糖値以外の増悪因子の存在も多くの臨床統計から示唆されている。即ち、ポリオ-ル代謝の異常説ではソルビト-ル過剰産生の原因として基室となるグルコ-スの供給量(血糖値)が重複されているが、ソルビト-ル産生系の律速酵素であるアルド-ス還元酵素(AR)の役割にも注目する必要性が指摘されている。 そこで本研究では、1.ARのcDNAを用いたARmRNAの特異的測定法を導入し、2.糖尿病におけるソルビト-ル産生増加にARmRNAの変化が関与しているか否かを観察し、3.ARの遺伝子レベルでの調節因子の有無を検討することにより、血糖値以下の合併症増悪因子の解明を試みた。 本年度は、糖尿病性腎症の主病変が生じる腎系球体及び糸球体培養細胞を用いて検討し、以下の結果が得られた。 1.米国NIHのカ-バ-博士により提供を受けたラットARのcDNAを用い、腎系球体の培養メサンギウム細胞にARmRNAの存在することをNorthern blot法により見い出した。また、本cDNAがARの遺伝子レベルでの変化を観察する上で有用であることを確認し得た。 2.ストレブトゾトシンを投与して作成した糖尿病ラットより糸球体を単離してソルビト-ル含量を酸素法により測定し、糖尿病では約3倍に増加していることを認めた。但し、糸球体のソルビト-ル含量は予想外に低く、5〜6匹のラットからわずかに一検体が得られたのみであった。 従って、今后AR活性、ARmRNA量の測定について多数のラットを用意して実験を行なうよう計画している。
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