研究概要 |
本研究の目的は糖輸送担体遺伝子(GT遺伝子)のDNA異型性をRFLP解析法を用いて検討し、II型糖尿病に特異的な遺伝子ハプロタイプの存在を解析することにある。GT遺伝子は主たる発現部位のちがいからGLUTー1からGLUTー5までわけられている。本研究では中でも重要なGLUTー1から(HepG2/赤血球型)、GLUTー2(肝,膵型)、GLUTー4(筋肉,脂肪型)についてRFLP解析を行ない、遺伝子マ-カ-としての有用性を検討するとともにII型糖尿病発症におけるGT遺伝子の関与の可能性についても検討を加えた。GLUTー1については5'側よりBgl II,Tag I,Xba I,Rst Iの各RFLPが確認され、各人種間での出現頻度には差があること、各RFLP間に連鎖不均衡性がみられないことが明らかになった。そこでこれらRFLPを組み合わせてextended haplotypeを解析した。これまでの検討では糖尿病に特異的なハプロタイプの存在は確認していない。GLUTー2領域ではEcoR I,Hae III,Tag Iにより計4つのRFLPを見出した。EcoR IとHae IIIによるRFLPはいずれもエクソン3周辺に存在し、同一のlength polymorphismである可能性がある。これらRFLPの人種間での出現頻度は異なる。日本人では極めて低く,新たなRFLPの検索が必要である。そのためACの繰り返し挿入部位(AC repeat)のlength polymorphismを新たなDNAマ-カ-として応用することを検討している。GLUTー4についてはKpn IによるRFLPが確認された。現時点で非糖尿病者と糖尿病者で出現頻度の差は確認されなかった。同一症例において、GLUTー1,ー2,ー4の異なる遺伝子領域を同時に解析し、複合遺伝子ハプロタイプとして解析する試みに着手した。これはII型糖尿病の発症遺伝子が単一ではないことを考慮すると意義のあるものと思われる。今後複合遺伝子ハプロタイプの解析をすすめ糖尿病に特異的な遺伝子パタ-ンの存在を検討する予定である。
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