1.腎外組織中プロレニンに関する検討 1).酵素抗体法による免疫組織化学的検討:剖検に際して得られたヒト下垂体組織において、免疫組織化学的染色を行ったところ、抗レニン抗体、抗アロレニン抗体にて特異的に染色される細胞が存在した。連続切片による検討では、GH産生細胞並びに一部のプロラクチン産生細胞と確認され、同細胞内でレニンが合成されていることが示唆された。さらに抗アンジオテンシノ-ゲン抗体、抗アンジオテンシンII抗体にしても染色される細胞があり、下垂体細胞内に独立したレニン・アンジオテンシン系の存在する可能性が示された。 2).in situ hybridization並びにノザンブロット分析による検討:プラスミドに組み込まれたレニンCDNAを大腸菌にて大量培養し、充分量のCDNAを得た。これをプロ-ブとして用いたin situ hybridization及びノ-ザンブロット解析は基礎的検討段階で、新たな知見は未だ得ていない。今後、各組織でのレニンのmRNAの発見を検討する予定である。 2.血中プロレニンに関する検討 ヒトレニンの直接測定法とトリアシン処理の組合せ、総レニン独自に開発した血中プロレニンの直接測定法を用いて、各種疾患における不活性型レニンを測定し、その臨床的意義を検討した。糖尿病患者において明らかに不活性型レニンの増加が認められ、糖尿病性神経症を有する者で著明であったが、起立試験による心拍数や血圧の変化、R-R間隔、振動覚、MCV、SCV等のいずれかのパラメ-タ-とも有意の相関は認められず、血中不活性型レニンの増加が、自律神経、末梢神経のいずれの障害をより密接に関係しているかは不明であった。
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