補助金交付の期間内に得られた新知見は次の通りである。1、プロテインキナ-ゼCの活性化により、膜燐脂質からのアラキドン酸遊離は亢進する。2、トロンビンやA23187刺激による血小板膜燐脂質からのアラキドン酸遊離の制御にはプロテインキナ-ゼCの活性化は関与しない。3、抗炎症剤であるインドメタシンは、血小板にトロンビンやA23187刺激を加えた時にみられるホスファチジルコリンやホスファチジルイノシト-ルからのアラキドン酸遊離を阻害する。また、A23187刺激時にみられるホスファチジルエタノ-ルアミンによるアラキドン酸の取り込みも阻害する。アスピリンにはそのような作用はない。4、血小板にトロンビン刺激を加えると、反応時間10秒ぐらいから124から135kDaと76kDaの蛋白バンドにチロシン燐酸化反応が認められ、反応時間30秒から1分で極大となり、その後は減少し、反応時間10分では、ほぼ元に復した。トロンビン刺激のかわりにA23187刺激を加えた場合も同様の結果が得られた。5、トロンビン刺激による血小板の蛋白チロシン燐酸化反応は、GTP結合蛋白、細胞内外のカルシウムイオン、フィブリノ-ゲンとGPIIbIIIaとの結合、トロンボキサンA_2生成や放出されたADPに依存しない。6、A23187刺激による血小板の蛋白チロシン燐酸化反応は、細胞内カルシウムイオンに依存するが細胞外カルシウムイオンには依存しない。さらに、ホスホリパ-ゼC、プロテインキナ-ゼC、ミオシン軽鎖キナ-ゼ、フィブリノ-ゲンとGPIIbIIIaとの結合、トロンボキサン生成や放出されたADPに依存しない。7、血小板の蛋白チロシン燐酸化反応は、凝集能に関与するが放出反応には関与しない。8、トロンボキサン受容体を介する刺激によっても血小板は蛋白チロシン燐酸化反応を呈する。それは、細胞内カルシウムイオンに依存した反応である。
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