研究概要 |
マウス骨髄増殖性肉腫ウイルス(MDSV)より開発されたレトロウイルスベクタ-pZGX-neoを用いて,人骨髄造血細胞に感染が成立可能な高力価の組み換えウイルス産生細胞株の樹立を試みた。外来遺伝子としては発現量の定量が可能なヒトGM-CSF遺伝子を利用した。GM-CSF遺伝子のcDNAのcoding領域をベクタ-のBamHlサイトに挿入してできたプラスミドであるpZGX-GMをパッケ-ジング細胞株PA317にリン酸カルシウム法でトランスフェクションを行い,G418mg/mlで選択培養を行った後,50クロ-ンのトランスフェクタントを得た。この各クロ-ンの培養上清中のGM-CSF濃度をELISA法で定量した。 トランスフェクタント培養上清中のGM-CSFはすべてのクロ-ンで検出感度の限界である1pg/ml以下であった。次に培養上清中のウイルス力価をマウス線維芽細胞株における形質転換の頻度を指標として測定したが,高力価のクロ-ンでも10^3CFU/mlであった。またこの高力価クロ-ンの培養上清を人骨髓細胞ゆうらいの細胞株K562を標的細胞としてウイルスの感染効率を計測すると約0.7%であった。 以上の結果から上記ウイルス産生株では人造血幹細胞への外来遺伝子導入に必要な力価がまだ得られていないと考えられた。現在,造血幹細胞への遺伝子導入が可能な高力価のウイルス産生株の作成を目的としてウイルスの二重感染法をとり入れるとともに,Molony白血病ウイルス由来のレトロウイルスベクタ-であるpDGLを用いて,感染効率を決定するためのプラスミドを構築中である。
|