研究概要 |
レトロウィルスベクタ-をもちいたヒト骨髄造血細胞への薬剤耐性遺伝子の導入の基礎的条件の設定としてヒト骨髄由来細胞株であるK562細胞に対するベクタ-の感染効率を検討した。ウィルスベクタ-としてネオマイシン耐性遺伝子を組み込まれたマウスMPSV(myeloproliferativesarcoma virus)由来ZGXーneoを選択してネオマイシン耐性細胞の出現頻度によって感染効率を算定した。次に外来遺伝子の発現量を算定するためにZGXーneoにヒト顆粒球・マクロファ-ジコロニ-刺激因子(GMーCSF)遺伝子を組み込んで培養上清中のGMーCSF量を測定した。MPSVーGMCSFではK562に対して感染効率は0.7%で上清中のGMーCSFは検出感度以下であった。このことから人骨髄細胞中MPSVのLTR活性が低いものと考えられたため、ベクタ-を変更して検討した。MuLV(murine leukemia virus)由来のLTRと薬剤耐性遺伝子としてRSVのLTRの下流にネオマイシン耐性遺伝子を有するpLRNLをベクタ-としてヒトGMーCSF遺伝子を組み込んだpLGMRNLを構築してK562に対する感染効率ならびに発現量を検討した。現在までのところpLGMSRNLのウィルス力価は、N1H3T3細胞株において10^4CFU/mlであり、K562への感染効率は1%であった。感染K562細胞におけるGMーCSF産生量ま10^6個あたり48時間で1ng/mlと良好な発現が得られた。他のヒト造血細胞由来細胞株であるKGー1,HLー60,MEGー01でも同様な成績が得られており、高力価のウィルス産生細胞を選択することによって造血幹細胞への遺伝子導入を試みている。しかし、感染効率は現在のところ骨髄細胞中でも頻度の少ない造血幹細胞を標的にするにはまだ低いのが問題点であり、造血刺激因子で幹細胞を選択的に増殖させておいてベクタ-を感染させるなどの方法を検討中である。
|