研究概要 |
造血幹細胞は細胞周期上静止期(Go期)に属するが、インタ-ロイキン6(ILー6)、顆粒球コロニ-刺激因子(GーCSF)、ILー1はILー3と共同で働き、これらの細胞を活発な細胞周期に移行させる活性を有することを報告した。これらの相乗因子は造血幹細胞の初期分化過程にも作用し、未分化な多能性を長く維持する機能を有することも報告してきた。造血幹細胞の有する重要なもう1つの機能、自己再生能を修飾する造血因子をこの間検討したが、ILー6,GーCSF,ILー1はILー3が支持する自己再生確率0.589に殆ど影響を及ぼさなかった。ILー4、TGFーbeta,Leukemia inhibitory factor(LIF)は共存することで、かえって自己再生能を低下させたが、実験ごとにバラツキが多く、一定したデ-タが得られていない。自己再生確率を高める造血因子が得られば、造血幹細胞を増幅することができ、臨床の場で用いれば、骨髄移植療法に大きな進歩をもたらすであろう。造血幹細胞の支持機能を有する骨髄ストロマ細胞由来の因子、ILー11、Stem cell factor(SCF)やストロマ細胞との共培養系を検討し、目的因子の発現に取り組みたい。 造血幹細胞の生存・維持に関与する造血因子の検討も合わせて試みた。ILー3、GーCSFにその機能が認められたが、完全ではなく、他の機能因子との総合作用と考えられた。 細胞分裂過程を映画で連続的にとらえるシステムを導入し、造血細胞由来のコロニ-形成過程を観察できるようになった。細胞種類によって細胞分裂態度、運動能、細胞倍加時間、細胞間相互作用が随分と異なっていた。現在解析を行なっているが、純化した造血幹細胞と造血因子を用いて、細胞周期の解析に応用できる系と考えられ今後も取り組む予定である。
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