研究概要 |
1目的:膵切除後の膵液瘻は、臨床上重要な問題である。この病態に対する治療法の一つとして、Somatostatinの誘導体薬、SMS201-995は、その強力な膵外分泌抑制作用の点で注目されている。SMS201-995の膵外分泌抑制作用の臨床病態を明らかにする意味で膵炎犬における本剤の治療効果を検索した。 2.方法:雑種成犬に対し、十二指腸切開の上、総胆管と主膵管を5Frのチュ-ブで連結し膵炎犬を作成し、血糖、膵酵素を測定した。(計画では60%膵切除の予定だったが、予備実験での死亡率が高く、本実験では付加していない。)本モデルにSMS201-995を投与し(SMS投与群)、投与しない群(対照群)と比較検討した。SMS直後(IV)10μg/Kg、6、18、30hs後(IM)各々10μg/Kgを投与した。 3.結果1)予備実験:膵炎モデル犬を作成し、1週間までの経過観測では、術後血清ビリルビン・血清アミラ-ゼ値が、2日目をピ-クに上昇し、以後漸減し、7日まで生存した。SMS201-995の投与を術直後よりほぼ6時間毎に投与し、48時間で膵臓組織を採取することとした。 2)本実験:血清アミラ-ゼ値は術前2010±413IU/lであったものが、対照群(n=6)で48時間後に31032±3820、SMS投与群(n=6)48時間後12300±946と6時間後よりSMS投与群が有意(x^2-test,p<0.01)に低下した。血清エラスタ-ゼ値では、術前117±9ng/dlであったが、対照群で18時間224±13.5SMS投与群で18時間154±614とSMS投与群が有意(x^2-test,p<0.01)に低かった。 3)組織像:HE染色光顕像では、対照群にみられた小葉構造の破壊が、SMS投与群にはみられず膵炎像は軽度であると思われた。 4.まとめ:膵炎モデル犬に対するSMS201-995の投与は、膵炎抑制に対する有効性が、膵酵素および組織所見から推察された。本剤は膵酵素逸脱による膵炎・膵液瘻に有用であると考えられる。
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