研究概要 |
ヒト大脳より精製したGTP binding protein Goα(Goα)を抗原とするポリクロ-ナル抗体(ウサギ)を利用した酵素免疫側測定法を使用して血清中のGoαを測定した。正常小児コントロ-ル(60名)の測定では半数以上の検体が測定感度以下であった。このためこれらの値を測定感度下限である23pg/mlとして計算した平均値は30.8pg/ml(SD=23.3pg/ml)であった。これよりカットオフ値を100pg/mlと設定した。神経芽細胞腫患児(42名)では陽性例(>100pg/ml)は35名(83%)であったが、他の小児癌患者(24例)においては陽性例は3例(13%)と少なく、その平均値も有意に低値であった。この結果から血清Goαの測定は神経芽細胞腫の鑑別診断に有用であることが判明した。一方、神経芽細胞腫患児に限って検討してみると、病期が進むほど血清Goα値は上昇するが、最も早期であるstage I例では症例数(4例)は少ないが陽性率が50%で、かつその測定値(平均132.0pg/ml)も比較的低値であった。このことは早期発見について問題がある事を示唆している。患児の予後との関係では強い相関がみられた。生存例(n=18)(2年生存、腫瘍(-))での平均(±SD)230±200pg/mlに対して、死亡例(n=19)では543±478pg/mlと有意に高値であった(p<0.05)。次いで、腫瘍組織中の値について検索では、平均3.39(0.95-7.02)μg/g tissueであり、他の小児癌の平均0.073μg/g tissueに比べ著しく高値であり組織マ-カ-としての有用性を窺わせる。しかし神経芽細胞腫患児ごとの血清値とその腫瘍組織内濃度との相関は少なかった。neuron specific enolase(NSE)でもこの様な傾向はみられており、分化抗原(NSE,Goα はその1種)では、腫瘍内濃度は分化につれて上昇するが、逆にその血清値は低下する傾向がある。現在この推定を証明するために神経芽細胞腫の培養細胞を使用して実験中である。
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