神経芽細胞腫患児56名の治療前血清中のGTP結合タンパクGoαを測定し、病期別および治療前、治療後等の臨床経過との関係を検討した。カットオフ値は正常小児コントロ-ル群(60名)より算定した100ng/mlである。神経芽細胞腫患児では陽性例(>100pg/ml)は48名で、その陽性率は86%であった。病期別の比較では病期の進行度に比例して陽性率は増加した。神経芽細胞腫において確立されたマ-カ-である尿カテコ-ルアミンとの相関はなかったが、血清NSEとは若干の相関がみられた。しかし、病期IあるいはIIのような早期例でも高値をとる例が少なくなく、病期とは独立した、腫瘍組織そのものの性格と関連するものと推測された。 正常神経組織ではGTP結合タンパクは膜に結合しているが、腫瘍組織では明らかに可溶性画分にも大量のGoαが検出でき、腫瘍化にともなった変化であることが確認できた。 神経芽細胞腫組織内の測定では、可溶性分画と膜結合性分画の両者について検討したところ両者には相関関係が認められた。腫瘍組織中のGoαと病理学的分化度との関係では分化の進んだ神経節芽細胞腫の方が狭義の神経芽細胞腫より高値をとる傾向がみられた。腫瘍組織の免疫組織学的検討においても、特に細胞周辺の神経線維様組織に強い局在を認め、大型の神経節細胞様の腫瘍細胞の胞体及び膜にも局在を認めた。しかし、小型の未熟な細胞には比較的反応は弱くこの結果からも分化との関連を推測させた。培養細胞はヒト由来神経芽細胞腫のcell line5種について検討した。手術材料に比べ明らかにGoαの含有量は少なく、樹立された腫瘍細胞の未熟性を窺わせるものであった。2種のcell lineについて増殖曲線に対比させて検討したが、腫瘍細胞の絶対量の少ない時期については測定系の感度以下となるため現在測定法の検討を行っているが全体的には増殖曲線上の変化は少ない。今後は薬剤の関連について検討する予定である。
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