研究概要 |
前年度に引き続き,妊娠90〜120日令の山羊6頭を用いて横隔膜へルニアモデルの作成を行った。前年度に作成した実験モデルでは侵襲が過大なためか,全例が胎内死亡したため,本年度は侵襲に留意し,横隔膜の欠損孔を比較的小さくした。また術後は状態が安定するまで回復室にて子宮収縮剤・抗生剤の投与を行った。しかし,結果的には全例が胎内死亡に終わった。このうち,2頭が術後1週以内に死亡し,残る4頭は術後10,13,15,20日目にそれぞれ死亡した。昨年度のモデルを含め,1週以上生存した6頭及び対照群として胎内死亡した双胎胎仔4頭を用い以下の検討を行った。まず,胎仔超音波検査で計測した死亡前の肺胸郭断面積比と剖検時の肺体重量比の比較検討を行った。対照群及び横隔膜ヘルニアモデルの肺胸郭断面積比はそれぞれ0.58±0.06,0.41±0.09と有意差を認めたが,肺体重量比はそれぞれ0.025±0.006,0.019±0.005と有意差を認めなかった。またこれら両群において肺胸郭断面積比と肺体重量比の間に有意な相関を認めた。肺の組織学的検討では,横隔膜ヘルニアモデルの手術側と対側間及び対照群でとの間に明らかな差異を認めなかった。また超音波ドップラ-による胎仔下行大動脈における最大血流速度の検討では,死亡直前を除き,明らかな低下はみられず対照群との間に差はみられなかった。以上の結果より,胎仔超音波検査による肺胸郭断面積比の計測は肺体重量比の予測,ひいては肺低形成の出生前評価に有用と結論された。
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