研究概要 |
昨年の研究結果から,ヒト末梢血単球の膜抗原の中で,HLAーDQ抗原の発現は10〜20%の単球にのみ見られることを見出した。所が,in vitroのアロ抗原刺激モデル(リンパ球混合培養)では,DQ抗原陽性単球の比率が上昇することが判明した。そこで,本年度は臨床応用の試みとして,腎移植患者の末梢血単球のHLAーDQ抗原の変動を至日的に検討した。 方法はフロ-サイトメトリ-を用いて,抗LeuM3単クロ-ン抗体と抗Leu10単クロ-ン抗体の二重染色によりDQ抗体陽性単球の比率を測定した。 12例の経過良好系腎移植癌例では,クレアチニン値の低下に伴ってDQ陽性単球も減少し,移植後28日目では平均12.5%の低値を示した。この間リンパ球の膜抗原の変動はみられなかった。 次に,腎移植後に急性拒絶反応の発症をみた症例において検討した。計12回の急性拒絶反応において,全例で拒絶反応時にDQ陽性単球の比率が急上昇し,大半が30%以上の高値を示した。尚,数日前からクレアチニンの上昇に失立ってDQ陽性単球が上昇した例も多い。即ち,急性拒絶反応の診断と予知において,DQ陽性単球は極めて有用系検査手段であることが判明した。 今後は更に症例数を重ね,より詳細な解析を行う予定である。
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