研究概要 |
リンパ球と共に単球も免疫反応において極めて重要な役割を果すことが近年明らかとなってきた。我々は移植免疫における単球の動態を、その膜表面におけるHLA抗原の消長から捉えることができるのではないかという仮説をたて、以下のアプロ-チにより検討した。 「アプロ-チ」 1。ヒト未梢血単球膜表面上のHLAクラスII HLA抗原(DR,DQ抗原)の検討ー健人、透析患者、腎移植後患者 2.移植免疫反応のin vitroモデルとしてのリンパ球混合培養における経日的単球膜表面のHLAクラスII抗原の変動 3。臨床的腎移植患者における術前・術後の単球膜表面HLAクラスII抗原消長の検討ーリンパ球膜表面のHLA抗原の動きとの対比 「結果」 ヒト未梢血単球はHLAーDR抗原をもち、HLAクラスI抗原を欠く。極めて興味深い点は全単球の10〜20%がHLAーDRと共にHLAーDQ抗原も表出している点であった。即ち単球はHLAーDQ抗原陽性群と陰性群に分けられることが判明した。そしてアロ抗原刺激を受けるとHLAーDQ陽性単球の比率が上昇することを確認した。逆に免疫抑制状態にあるとその比率が低下しており、HLAーDQ陽性単球は免疫賊活状態を表していると考えられた。これは腎移植の拒絶反応時にHLAーDQ陽性単球が著増する現象からも裏付けられた。 「意義」 本研究の結果は、移植免疫における単球の機能を理解する上で一つの示唆を与え、臨床的には拒絶反応のモニタリングとして単球の動態が極めて有用なることを明らかとした。
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