研究概要 |
1.褐色細胞腫におけるエンケファリンの免疫組識化学的検討 26例の褐色細胞腫摘除標本(ホルマリン固定パラフィン包理)を用い、メチオニンおよびロイシンーエンケファリンに関して免疫組識化学的検索を行なった。その結果、強弱の差はあるものの,すべての症例の褐色細胞腫がエンケファリン陽性であることが判明した。このことは褐色細胞腫が、その発生母地である副腎髄質あるいは髄外クロ-ム親和組識の性質を依然保持していることを示している。また、ノルアドレナリンよりもアドレナリン分泌型褐色細胞腫において、エンケファリンは強陽性のことが多いことも判明した。また、尿中メタネフリン排泄がこのエンケファリン陽性度と相関が認められることも判明した。 2.褐色細胞腫患者における術前・術中・術後の血中エンケファリン動態 最近手術を施行した褐色細胞腫患者14例を対象とし、対照群6例とともに,術前・術中・術後の血中ロイシンーエンケファリンと血中カテコ-ルアミンを測定し、比較検討した。褐色細胞腫群患者の血中エンケファリン濃度は、術前・術中においてカテコ-ルアミンとともに対照群と比べ有意に高値を示した。さらにカテコ-ルアミンと同様、術後は低下し、対照群と差を認めなくなった。従来,主に腫瘍中濃度で報告されているように、NA型よりA・NA型、非発作型より発作型のほうが血中でも高値を示す傾向が見られたが、統計学的には術前・術中・術後を通じて有意差を認めなかった。以上のごとくエンケファリンはカテコ-ルアミン放出に密接な関係を持つことが示唆され、血中半減期が非常に短いことを考え合わせると、カテコ-ルアミン分泌に何らかの調節的役割を演じているのではないかと考えられる。また、臨床的重症群と軽症群との間には、術中エンケファリン濃度の変動に関して明らかな差を認め、褐色細胞腫における重症度の指標の手助けになりうる可能性が示唆された。
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