今年度、我々は(1)抗A型レクチンであるHPA(Helix panatia)を用い酵素抗体法(ABC法)により、乳癌組織をパラフィン切片上で染色する手法を確立した。(2)一方、HLA抗原の乳癌組織における発現性の検討を行い、乳癌細胞を抗HLA抗体を用いて酵素抗体法を行い染色してきた。(3)現在までの研究により、核異型度、核DNA量、ホルモンレセプタ-、BrdV(Bromodeoxyuridine)Iabling Index、等はそれぞれ悪性度診断の指標となり得る事が明かとされている。 結果:(1)HPAの結合性と、臨床病理学的因子である、腫瘍径、組織学的リンパ節転移の程度、ホルモンレセプタ-(エストロゲンレセプタ-、プロゲステワンレセプタ-)の有無、組織型、核異型度、閉経の前後、核DNA量、HLA抗原発現性の状態等との関連につき検討したが、症例数が少ないための、いづれの因子とも関連が認められなかった。(2)HLA抗原発現性の状態は、ホルモンレセプタ-の有無や核DNA量との間に有意な関連は認めていないが、組織学的リンパ節転移程度との間に有意な関連を見出してきている。 今後、症例数を増やして、さらに詳細な検討が必要と考えられるが、抗A型レクチン以外のレクチンについても、酵素抗体法による染色手法を確立し、詳細な統計的処理を行い、その意義を検討する事が必要であると考えられる。
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