研究概要 |
平成元年度の研究実績の概要で報告したように、HPAと臨床病理学的諸因子と予後との間には、関連のあるデ-タは得られなかった。そこで今年度は、他のレクチンであるPNA,RCA,PHA,DBA,ConーA,LCA120,UEAーI,WGAを用い乳癌組織のパラフィン切片を、直接法による酵素抗体法で染色し、同様の検討を行った。検討症例数は、50例である。これらのレクチンはおもに細胞質に染色が認められた。これらのレクチンと腫瘤径と組織学的リンパ節転移との間には関連を認めなかった。一方、DBA陽性例,ConーA陰性例およびWGA陰性症例は再発する傾向を認め、さらにPHA陰性例では有意の関連を認めた。しかし、現在のところ再発症例数が少ないため,今後検索症例数を重ね、さらにホルモンレセプタ-や病期、悪性度診断の指標である核異型度、核DNA量、ホルモンレセプタ-、BrdU Labeling index,等との関連性も検討する予定である。 一方、乳癌組織のHLAクラスI抗原はおもにその細胞膜が染色された。HLAクラスI抗原は組織型、ホルモンレセプタ-、核異型、核DNA量とは関連を認めなかったが、腫瘤径、組織学的リンパ節転移、病期との間に有意の関連が認められ、癌の進展には癌対宿主の免疫応答が関連している可能性が考えられた。 今後、上記のように検索症例数を増やして、多方面から統計学的検討を加えていく予定である。
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