研究概要 |
前年度の研究実績として,免疫寛容状態にある死体腎移植患者の末梢血リンパ球由来の融合細胞を作製し,その中からその培養上清に非特異的なMLC抑制活性を有する因子が含まれるようなハイブリド-マをクロ-ニングすることが出来た。2種類の非特異的MLC抑制性モノクロ-ナル抗体を産生するハイブリド-マは,4回のヒト非特異的なMLCアッセイ中に添加した結果,連続して強い免疫抑制活性を示し,その間にモノクロ-ナル抗体作製としては十分と思われる3回の厳密なクロ-ニングを行っている。それらのハイブリド-マを培養し続けるとともに液体窒素タンク中に凍結保存し,また得られた培養上清の保存を行った。まず,モノクロ-ナル抗体としての培養上清の性質について調べたところ,抗体の含有量が非常に微量なためか,免疫グロブリンの同定までには至らなかった。ハイブリド-マ細胞は増殖率も良く,どうして抗体量が不十分であったかは不明である。2種類のみでなく,クロ-ニング途中の培養上清を含めて10種類以上に試みたが,すべて免疫グロブリンの同定は不可能であった。得られたハイブリド-マが産生する培養上清の免疫抑制性因子としての安定性の検討では,3回の厳密なクロ-ニングを行い,単一の細胞由来のハイブリド-マと考えられるが,以後の培養上清を用いてのMLC添加実験では抑制程度が弱まり,免疫抑制性因子としての活性は長期に培養を継続させた結果、除々に失活してしまった。得られたハイブリド-マはモノクロ-ナル抗体を産生していると考えられたが,免疫グロブリンの含有量も微量で安定性も弱く,今回の研究では,モノクロ-ナル抗体としての非特異的な免疫抑制性因子を作製することは不可能であった。
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