1)腰部結腸神経(交感神経)切除後の変化:イヌ尾側腸間膜動脈に随行している腰部結腸神経を切除し、大腸壁の壁内神経の変化を経時的に観察した。縦走・内輪筋の間には(1)無髄神経線維から構成される神経束(2)有髄神経線維からなる神経束および(3)筋間神経叢の3種が観察された。このうち、腰部結腸神経切除後にWaller変性を示すものは無髄神経線維から構成される神経束であり、神経切除後24時間目頃より明らかな変性所見が認められ、電顕的に観察すると筋層内の平滑筋細胞間に介在する無髄線維や筋間神経叢内の神経節細胞に近接する軸索終末にも認められた。次に、再生線維の出現を観察すると、切除後3ヶ月目頃から変性軸索に介在して小径の再生軸索がみられ6ヶ月目にはより顕著となった。しかし、再生軸索の密度は低く、軸索径も小さいため機能的には不完全であると予想された。2)副交感神経(直腸枝)切除後の変化:仙骨副交感神経系に属する骨盤内臓神経からの線維は骨盤神経叢、中直腸動脈神経叢(直腸枝)を経て腸管に進入するが、直腸枝切除後、最も著明な変化は縦走・内輪筋の間に分布する小径有髄神経を含む神経束の変化であり、早期からSchwann細胞の増加を伴うWaller変性が出現した。電顕的にはミエリン鞘が崩壊しSchwann細胞によって処理されている変性有髄神経や軸索の腫大・膨化を示す無髄神経が認められた。この神経は多数の無髄神経と、それに介在して知覚系に関与する少数の有髄神経を含み筋層間を口側に向かって上行していた。一方、筋間神経叢では神経膠細胞の増加を伴い神経節細胞周囲の軸索や軸索終末に変性が観察され、24時間目には神経節細胞周囲には通常の2倍くらいに腫大し内部に多数の崩壊産物が凝集した軸索終末もみられ、一週目頃には顕著であった。また、腰部結腸神経と同様に神経切除後3〜6ヵ月を経過すると再生神経と考えられる小径軸索の出現がみられた。
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