硬変肝切除後にはcatabolismは方進し、低栄養状態が肝不全などの合併症発症の要因になると考えられている。一般的に硬変肝切除直後数日は脂肪乳剤の投与は禁忌とされてきた。今回、硬変肝切除後の外因性脂肪の利用と、脂肪乳剤による肝綱内系機能への影響をまず実験的に検討した。肝切除後5%グルコ-ス30cal/kg/日投与群(I群)、5%グルコ-スに20%脂肪乳剤(200cal/kg/日)投与群(II群)、II群にアルニチン250mg/kgを併用投与した群(III群)を肝硬変ラットモデルに設定した。肝切除12時間後に ^<14>C標識脂肪乳剤を投与し、5時間後の ^<14>C累積回収率はI群では対照(非肝切除群)の40%に対して22%と抑制されたが、II群28%、III群37%と増加がみられた。また、肝ATP量、血中betaーハイドロキシ酪酸濃度もI、II、III群の順に高値を示した。また、脂肪乳剤の適正配合比を明らかにするため、20、30、40%の配合比で14CO^2回収率を検討したところ、30%群が高値を示した。 ^<59>Fe標識コンドロイチン硫酸鉄を用いた綱内系貧食指数K値をII群に比較しIII群でI群に近似した値がえられた。以上のことより、脂肪乳剤の投与には適正配合比があること、脂肪の利用にカルニンチンが重要な役割を果すことが明らかにされた、また、脂肪の利用方進により綱内系機能障害も軽減するため、脂肪の利用が良好な状態では積極的に投与するべきものと結論された。 臨床例における検討ではindirect calorimetry による脂肪の利用を中心として検討した。術前の脂肪負荷による検討では、肝硬変の重症なものほど脂肪の利用が障害される傾向を認めた。また、術後においても肝障害の軽度な経過良好例では脂肪はよく利用され、その積極的な投与は手術侵襲よりの早期回復に寄与するものと考えられた。一方、肝障害の増悪がみられる経過不良例では、脂肪の投与を制限する必要があるものと思われた。
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