短小腸症候群の唯一の根本的治療は小腸移植と考えられる。小児の小腸移植を想定しサイズから考え、ウサギに於ける同種間の小腸移植を行うことにより、このモデルを作り、更に拒絶反応をCSAにて対処し移植腸管の吸収試験を行うこととし、移植腸管の機能の立場から実験を行ってみることにした。またそれに先立ち移植腸管の阻血実験とシクロスポリンの指適投与量についても検討する。 結果1)ウサギにおけるシクロスポリンの投与量は10mg/kg/day筋注でtrough levelで血清中濃度が100ー200ng/mlを維持できこれが至適投与量であると考えられた。 2)ウサギ小腸の組織酸素分圧、pHはそれぞれ36.07±9.97mmHg、6.94±0.15であることがわかった。 3)移植を前提に腸管の阻血実験を行ったところ上腸間膜動脈、門脈同時遮断では60分以内であれば腸管壁内PO2、pHの改善を認めた。 4)シクロスポリン投与下での移植では18例中11例(61.1%)が生着した。さらにこれらのうち4例に対しシクロスポリンの投与を中止したところ全例移植腸管は拒絶された。拒絶は抗原量が少ないためchronic rejectionの形をとった。 5)組織検索では拒絶群は絨毛が除々に平坦化し筋層が肥厚し更に出血壊死に陥るが生着群はほぼ正常な構造を示す。なおリンパ管の再開通は2週間前後で始まることがわかった。 6)吸収能の検索では拒絶群では2日目にすでに糖の吸収能の低下を認め7日目では吸収能はなかった。拒絶群のこの変化は肉眼的人工肛門の変化より早く拒絶反応の指標になりうると考えられた。 7)移植腸管の至適長さの検討は抗原量の多さと手技上の問題から実験不可能であった。
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