研究概要 |
1、今年度は、昨年度に作成した精製FAPを、BALB/cマウスに免疫し、マウス脾細胞を用いた細胞融合法によって、FAPに対する新しいモノクロ-ナル抗体を得た。 2、FAPを認識する2種のマウスモノクロ-ナル抗体を用いた、SANDWICH EIA法を確立し、患者血清429例中のFAPを測定した。FAPの各種疾患別陽性率は、膵癌67%、胆管癌67%、乳頭部癌60%と比較的高値を示したが、大腸癌8%、胃癌16%、肝癌12%、乳癌4%、子宮癌6%、前立腺癌9%等では低い陽性率にとどまった。膵癌以外の悪性疾患でFAPが陽性を示した症例においては、組織学的検索が可能であった全例において、膵への癌浸潤、あるいは慢性膵炎等の膵病変が認められた。又、良性疾患における陽性率は、慢性膵炎47%、肝硬変及び慢性肝炎14%、糖尿病9%等であった。膵癌や膵浸潤陽性の胃癌、乳頭部癌における、膵液中のFAPの陽性率は、70%、慢性膵炎症例での膵液中陽性率は22%であった。 3、FAPの精製法は確立されたが、FAPのアミノ酸配例、糖鎖構造については検討中である。 4、血清中、膵液中とも、FAPとCA19ー9,CEA等との相関関係は認められなかった。膵癌症例での血清中CA19ー9,CEAの陽性率は、429例中各々72%、47%であり、FAPは陽性率はCA19ー9より低かったが、特異性はFAPの方が良好であった。 今後の方針としてさらに感度の良いFAPの測定方法を確立し、慢性膵炎との鑑別診断を含めた、膵癌診断におけるFAPの有用性について検索を進めるとともに、FAPのアミノ酸配例、糖鎖構造に関する解析を進めたい。
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