研究概要 |
MTX/5ーFU時間差療法に対する治療感受性と、胃癌の組織型との関連について、切除胃から得られた胃癌組織及び継代培養細胞系を用いて、主に酵素活性及び酵素量の面で検討してきた。検討項目はMTX/5ーFUの主たる核酸合成阻害の作用機序の1つと考えられているチミジル酸合成酵素(TS)と、その阻害に対するサルベ-ジとされるチミジンキナ-ゼ(TK)である。臨床から得られた未分化型(n=19)と分化型(n=16)胃癌組織におけるTS活性は各々612.8±278.5、389.2±186.4(fmol/mg prot/min)、TK活性が各々51.5±16.3、76.3±28.4(fmol/mg prot/min)、TS/TK比が各々12.5±6.2、5.8±3.5であり、両者の間に有意差を認めている(p<0.01)。しかしながらbinding assayによる酵素量の測定では組織型との関係は明らかではない。現在は、さらに非切除例も含めて、内視鏡的生検材料について、肉眼型とTS/TKの関係、化学療法の前後におけるその変化等を検討の項目に加えている。一方で測定対象のピリミジン代謝系酵素を増やし、5ーFUの燐酸化や分解に関与する酵素についても一部測定を開始している。継代培等ヒト胃癌細胞4系列(MKN74,MKN28,MKN45,OKAJIMA)を用いた検討では、TS(pmol/g prot)/TK(nmol/mg prot/30min)/TSTK比が、分化型で98.9±59.3/4.75±4.32/36.4±18.0、未分化型で252.6±17.6/2.85±0.33/90.7±16.6と臨床材料と同様の傾向を示す結果が得られている。これらの細胞を用いた化学療法感受性テストを行っているが、感受性と分化度の関係を明らかにするには至っていない。
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