肝門部胆管癌切除術の根治性向上の上で肝動脈、門脈を含む肝十二指腸間膜全切除術の意義は高い。しかしその際の術後肝不全発生率は高く肝への側副血行路を完全遮断した上での肝動脈血紮の影響は重大である。その対策として部分的門脈動脈血化法を行い、その有効性を検討してきたが最終年度では、より臨床に即したモデルとして大腿動脈と肝内門脈に9Frのウロキナーゼコーティングチューブによるバイパスを設置し、7日間にわたる持続的な門脈動脈血化法を行って、その有用性を実験的に検討した。この際のバイパス流量は基礎実験より約100ml/分であった。その結果、7日間チューブの開存性は良好に保たれ、本チューブの利用は可能であった。肝酸素供給量は無処置群と同等に維持され、肝動脈結紮非バイパス群に比し有意に高値であった。肝静脈血PCO_2、PHも無処置群と同等で非バイパス群より有意に良好であった。肝組織エネルギーチャージでも処置前値および無処置群と同等の値を維持し、非バイパス群に対し有意に高値を維持した。組織学的検索でも非バイパス群が肝壊死を伴うものに対し、バイパス群では壊死を認めず、胆管系も良好に維持された。肝静脈血乳酸値も非バイパス群でみられるような上昇を示さなかった。以上より部分的門脈動脈血化法とくにウロキナーゼコーティングチューブを用いた持続的動脈血化法は7日間にわたり維持可能であり、肝十二指腸間膜全切除により高率に発生する術後肝不全を防止する上で有用であると結論した。
|